とある内科医の医学勉強帳

感染症医、総合内科医の忘備録

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

髄膜炎を疑う身体所見(髄膜刺激徴候)

・項部硬直 ・Kernig徴候(ケルニッヒ) ・Brudzinski徴候(ブルジンスキー) 上記はいずれも、刺激状態にあるくも膜下腔を貫通している脊髄神経を伸展させる動きへの自然発生的な拒否反応である。髄膜炎の他、クモ膜下出血でもみられる。 項部硬直 項部硬直…

Lemierre症候群

目次 概要 機序 起炎菌 合併症 治療 予後 参考文献 重要点:「若年者、咽頭炎のエピソード、肺のseptic emboli」という場面では、Lemierre症候群を疑う! 概要 Lemierre症候群(Lemierre’s syndrome)とは、咽頭、扁桃など口腔内の感染症から頸静脈の化膿性…

G群溶連菌~特にStreptococcus dysgalactiae subsp. equsimilisについて

ヒトに感染を起こすG群溶連菌は以下の3種 ・Streptococcus dysgalactiae subsp. equsimilis ・Streptococcus anginosus group ・Streptococcus canis (C、G群とされた90%はS.dysgalactiae subsp. equsimilis、残りはS.anginosus group) Streptococcus dysg…

髄膜炎尿閉症候群(MRS:meningitis-retention syndrome)

無菌性髄膜炎に尿閉を合併する稀な病態 通常4~10日間程度で後遺症なく自然軽快するが、時に5~7週間ほど遷延することもある 原則特別な治療は必要ない 機序は、原因疾患による仙髄神経根障害、一過性の括約筋障害が疑われている 髄膜炎尿閉症候群の原因とし…

巨舌の鑑別

巨舌(macroglossia) 定義:安静時の舌が歯、もしくは歯槽堤を超えて出ている状態 分類: true macroglossia:舌に組織学的変化あり ・primary macroglossia:舌自体に問題があり、正常構造が肥大や過形成で大きくなる ・secondary macroglossia:異常構造…

fast edemaとslow edema~下腿浮腫の鑑別~

下腿浮腫の鑑別を考える時、fast edemaとslow edemaの概念が役に立つ時があります。 fast edemaを起こす代表的な病態がネフローゼ症候群です。 両下肢はテカテカと光沢があり、圧迫してもあっという間に圧痕が消えていきます。 これに対し、うっ血性心不全に…

ミオスタチン(myostatin)とは

ミオスタチン(myostatin)は、TGF-βスーパーファミリーに属する26kDaの糖蛋白であり、主に骨格筋で合成され、骨格筋の増殖を抑制する。 myostatin遺伝子を欠失した牛は、「Belgian Blue Cattle」と呼ばれ、普通の牛の2~3倍の量の筋肉を持つ牛として、ヨー…

大脳白質病変とは

大脳白質病変は、虚血による信号変化で、典型的な像としてはMRI T1強調像で等~軽度低信号、T2、FLAIRで高信号域を呈する。 大脳白質病変は、脳卒中、認知症のリスクとなる。 特にハイリスクとされる変化 ・PVH: periventricular hyperintensity(脳室周囲高…

E型肝炎の肝外合併症 Hepatitis E virus (Review) : Infection beyond the liver? J Hepatology 2017; 66: 1082-1095

Introduction E型肝炎ウイルス(HEV) ・世界では毎年約300万人の感染、7万人が死亡 ・genotypeは1~4 ・時々急性肝不全を起こす(特に、妊婦におけるgenotype1感染) ・欧米ではgenotype3による感染が多く、多くは豚肉の摂取を介して感染 ・血液製剤による…