とある内科医の医学勉強帳

感染症医、総合内科医の忘備録

恥骨結合炎と化膿性恥骨骨髄炎

内科学会雑誌の「今月の症例」で、化膿性恥骨骨髄炎がありました。

ラグビー選手に発症した化膿性恥骨骨髄炎の1例  日内会誌 2018; 107: 2518-2523)

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そこから学んだことは、

「若年運動選手の発熱を伴った鼠径部痛、恥骨部痛は、化膿性恥骨骨髄炎を疑う!」

 

化膿性恥骨骨髄炎 Osteomyelitis pubis

 細菌感染による骨髄炎

リスク因子

・アスリート(サッカー、ラグビー、ランニング、など)

泌尿器科手術

・骨盤内悪性腫瘍

 

※別診断として、「恥骨結合炎」がある

恥骨結合、股関節、軟骨に機械的な炎症が生じ、鼠径部痛を呈するもの

恥骨結合に付着している、腹直筋、内転筋等の機械的ストレスが原因とされる

症状は恥骨結合、鼠径部周辺の不快感、疼痛で、走ったり、ボールを蹴ったり、身体をねじったりした時などに増悪する

アスリート、特に男性サッカー選手に多くみられ、基本的に安静、冷却、消炎鎮痛剤などの保存的加療により軽快する

競技までの復帰には3.8~13週間(平均9.6週)を要していた

 

化膿性恥骨骨髄炎の主な起炎菌

Staphylococcus aureus黄色ブドウ球菌

Streptococcus pygenes(A群溶連菌)

・Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌

・Escherichia coli(大腸菌

・Salmonella species(サルモネラ菌群)

・嫌気性菌

 

診断 

血液培養、MRI、CT

 

治療・予後

脊椎炎、骨髄炎に準じて最低6週間以上の抗菌薬治療

5ヶ月後に膿瘍形成を伴い再発して、デブリドマンを要した例もある

 

参考文献

ラグビー選手に発症した化膿性恥骨骨髄炎の1例  日内会誌 2018; 107: 2518-2523

Treatment of osteitis pubis and osteomyelitis of the pubic symphysis in athletes: a systematic review.  Br J Sports Med 2011; 45: 57-64.

(全文PDF:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3719975/pdf/nihms475695.pdf)