とある内科医の医学勉強帳

感染症医、総合内科医の忘備録

G群溶連菌~特にStreptococcus dysgalactiae subsp. equsimilisについて

 

ヒトに感染を起こすG群溶連菌は以下の3種

・Streptococcus dysgalactiae subsp. equsimilis

・Streptococcus anginosus group

・Streptococcus canis

(C、G群とされた90%はS.dysgalactiae subsp. equsimilis、残りはS.anginosus group)

 

Streptococcus dysgalactiae subsp. equsimilis (SDSE)

概要

最も頻度の高いG群溶連菌感染症

LancefieldのA、C、Gのいずれかに凝集する

ヒトの鼻咽頭、消化管、皮膚、泌尿生殖器の常在菌

悪性腫瘍、糖尿病、心疾患など基礎疾患がある高齢者で、皮膚・軟部組織感染症の他、菌血症、感染性心内膜炎、関節炎、骨髄炎などの原因となる

 

S.pyogenesと共通の病原因子を有し、壊死性筋膜炎Streptococcal toxic shock syndromeなど同様の病態を形成する

病原因子として、M蛋白(白血球の食作用から逃れたり、組織侵入に関連)、Streptokinase(フィブリンを分解し、凝固系を阻害)、Hyaluronidase(組織間隙のヒアルロン酸を分解)、Streptolysin O(膜障害作用)、Streptolysin S(組織壊死)などがある

 

疫学

S.dysgalactiae subsp. equsimilisは本邦の壊死性筋膜炎の原因菌の3.6%を占める

(Clin Microbiol Infect 2010; 16: 1097-1103)

S.pyogenesによる壊死性筋膜炎に比べ、基礎疾患を有する例が多く(80~90%前後)、死亡率も高いとの報告がある(11% vs 28%)

 

治療

ペニシリンが第一選択

Clindamycin (CLDM)を併用する(理由は以下)

・蛋白合成抑制作用により、菌の毒素産生を抑える

・膿瘍移行性、組織移行性に優れる

・すべての分裂段階の菌に抗菌効果があり、抗菌力は菌の量に影響されない

・Post-antibiotic effect(PAE)が強い

 

 

参考文献

 C群およびG群溶血性レンサ球菌による侵襲性感染症についてのアンケート調査(生方 公子ら、感染症誌 2006; 80: 480-487)

G群溶血性連鎖球菌菌血症104症例の臨床的特徴および市中発症群と院内発症群の臨床的特徴の比較(三好 和康ら、感染症誌 2017; 91: 553-557)

G群溶血性レンサ球菌による壊死性筋膜炎の1例(辻 英輝ら、日本救急医学会雑誌 2012; 23: 30-35)