とある内科医の医学勉強帳

感染症医、総合内科医の忘備録

アシクロビル脳症

ポイント:

帯状疱疹ヘルペスウイルス感染症治療中に生じた意識障害、精神神経症状を見た場合は、ウイルス性脳炎とアシクロビル脳症の鑑別を!」

 

アシクロビル脳症とは?

抗へルペス薬のアシクロビルは中枢神経系への移行が良好であり、その脳脊髄液中濃度は血中濃度の約50%と高い。主に腎臓で排泄されるため、腎機能障害者では排泄が遅延し、まれに精神神経症状をきたす。

 

腎機能正常者における報告もあり、高齢者、脱水合併時には注意が必要。

尚、近年抗へルペス薬の主流であるバラシクロビルは、肝臓で代謝されアシクロビルとなるので、同じく脳症の原因薬剤となる。

 

症状意識障害、興奮・錯乱、振戦、傾眠、幻覚、ミオクローヌス、異常行動、構音障害、歩行障害など

鑑別脳炎、脳血管障害、てんかんなど

特に、ウイルス性脳炎の鑑別が必要であり、髄液検査を考慮する

治療・予後:多くは薬剤投与中止により24時間以内に改善するとされるが、重症例では昏睡に至り、死亡することもある

 

※アシクロビルは腹膜透析では除去されない。血液透析では除去される。

 

参考資料

腎機能正常者の帯状疱疹治療中にみられたアシクロビル脳症の1例 臨床皮膚科 2013; 67: 265-268

高齢者におけるアシクロビル脳症の1例 日臨救急医会誌 2017; 20: 763-8 (pdf→https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/20/6/20_763/_pdf/-char/ja)